- 5G/4G/LTEの標準化には3GPPが関わっているようだけど、そもそも3GPPって何?
- 3GPPの中身はどういうふうになっているんだろう…
- 3GPPで何がどのように決められているかまではよく知らない。
5G/4G/LTEの担当者になると、よく耳にするようになる言葉が3GPPです。
5G/4G/LTEの標準化の中心となるのが3GPPであるため、5G/4G/LTEの標準化についてよく知るためには3GPPの理解が不可欠です。
そこで、この記事では、5G/4G/LTEの標準化の中心となる3GPPの概要を説明します。
この記事を読めば、5G/4G/LTEの標準化と3GPPの全体像が分かります。
3GPP (3rd Generation Partnership Project)
3GPPは、第3世代パートナーシッププロジェクト(3rd Generation Partnership Project)の略語です。
一言で言うと、3GPPは、移動体通信 (5G/4G/LTEなど) の技術仕様を検討し作成するためのプロジェクトです。
3GPPは、標準化機関 (Standard Developing Organization: SDO)そのものではなく、主要な国または地域を代表する7つの標準化機関 (SDO)の共同プロジェクトです。
7つのSDOは、ARIB (日本)、ATIS (米国)、CCSA (中国)、ETSI (欧州)、TSDSI (インド)、TTA (韓国)、TTC (日本)であり、3GPPではOrganization Partner (OP)と呼ばれています。
3GPPにおいて作成された技術仕様は、SDOである各OPによって国または地域の標準 (standard) として発行されます。つまり、3GPPが、標準化すべき技術仕様を作成し、OPが、その技術仕様を標準として発行します。
さらに、国や地域の標準となった技術仕様はOPの協力によりITU (International Telecommunication Union)に提案され、ITUはこの技術仕様についての勧告を発行します。これにより、技術仕様は国際標準となります。
【アウトプット】3GPP TS
3GPPで検討され作成される技術仕様は、3GPP TS (Technical Specification)という文書にまとめられます。
3GPPでは多数の3GPP TSが作成されていますが、これらの3GPP TSはseriesごとに分類されています。具体的には、21~38 seriesまでが3G以降のseriesであり、00~13 seriesと41~55 seriesとが3Gより前のGSMのseriesです。
各seriesには、対象範囲があり、その対象範囲の3GPP TSが含まれています。例えば、 25 seriesには3Gの無線部分の3GPP TSが含まれ、36 seriesにはLTE/4Gの無線部分の3GPP TSが含まれ、38 seriesには 5Gの無線部分の3GPP TSが含まれています。
各3GPP TSには、series内での特定のテーマの技術仕様が記載されています。
例えば、38 seriesの中で、3GPP TS 38.300には、5Gの無線部分についての全般的な内容が記載され、3GPP TS 38.331には、5Gの無線部分のうちのRRC protocolの技術仕様が記載されています。
例えば、36 seriesの中で、3GPP TS 36.300には、LTE/4Gの無線部分についての全般的な内容が記載され、3GPP TS 36.331には、LTE/4Gの無線部分のうちのRRC protocolの技術仕様が記載されています。
さらに、3GPP TSは随時更新されていくので、3GPP TSにはバージョンがあります。例えば、3GPP TS 38.300には、V15.0.0、V15.1.0、V15.2.0、V15.3.0、V15.4.0などのバージョンがあります。
3GPP TSは、以下のようにTS番号とバージョンによって識別されます。
【組織構成】PCG & TSG & WG
3GPPは、PCG (Project Coordination Group)と複数のTSG (Technical Specification Group)で構成されています。
PCGは、3GPPにおける最高の意思決定機関であり、3GPPというプロジェクト全体の調整を行います。具体的には、PCGは、TSGの作業項目 (Working Item: WI)の最終的な採用、選挙結果や3GPPに投じられるリソースなどの承認、プロジェクト全体の進捗管理などを行います。PCGにはOPが参加します。
TSGは、3GPPの技術仕様を検討し作成するグループです。現在、TSG RAN、TSG CTおよびTSG SAという3つのTSGが存在しています。TSGには、各OPの個別メンバー (Individual Member: IM) である企業が直接参加します。
3GPPのシステムは、極限まで単純化すると、端末にあたるUE (User Equipment)と、基地局にあたるRAN (Radio Access Network)と、基地局の裏側にあるコアネットワークの3つに分けられますが、TSG RAN、TSG CTおよびTSG SAのそれぞれの対象範囲のイメージは、概ね以下のようになります。
TSG RANは、RANに関わる技術仕様の検討・作成を担っています。具体的には、TSG RANでは、UEとRANとの間の通信のためのプロトコル、基地局間の通信のためのプロトコル、RANとCNとの間の通信のためのプロトコルなどの技術仕様が検討され、作成されます。
TSG CTは、コアネットワークとUEに関わる技術仕様の検討・作成を担っています。具体的には、UEとコアネットワークとの間の通信のためのプロトコル、コアネットワーク内の通信のためのプロトコル、外部ネットワークとの相互接続、課金制御などの技術仕様が検討され、作成されます。
TSG SAは、サービスおよびシステム全体に関わる技術仕様の検討・作成を担っています。さらに、TSG SAは、TSG間の調整も担っています。
各TSGは、その配下に複数のWG (Working Group)をもち、各WGにおいて実際の技術仕様の検討・作成を行います。WGごとに対象範囲が予め定められており、各WGでは、この対象範囲における技術仕様の検討・作成が行われます。
各WGは、年間を通じて決められているスケジュールに沿って会合を開催し、技術仕様の検討・作成を進めていきます。
WGの会合に向けて、参加企業は、技術的な課題や標準化すべき技術を提案する寄書 (contribution)を提出します。そして、会合では、寄書による提案について議論が行われます。
【プロセス】Release & Stage
3GPPにおける技術仕様の検討・作成は、Releaseと呼ばれる機能のパッケージの単位で進められていきます。
基本的には、新しいReleaseは古いReleaseの機能を含み、後方互換性 (backward compatibility) が確保されています。
例えば、LTEは、Release 8から導入され、5Gは、Release 15から導入されています。LTEおよび5Gは、導入後もReleaseを重ねるごとに進化を続けています。
上の図ではReleaseを横一列に記載しましたが、実際には、1つのReleaseが完了してから次のReleaseが開始されるのではなく、以下のように複数のReleaseが並列で検討され、作成されます。
各Releaseは、Stage 1、Stage 2およびStage 3という3つのStageで進められます。
大雑把に言うと、Stage 1では、サービスの要求が検討され、Stage 2では、サポートする必要がある機能が検討され、Stage 3では、機能の実装のための詳細が検討されます。
1つのStageが全て完了してから次のStageが開始されるのではなく、以下のように1つのStageと次のStageとが並行して進められます。
まとめ
3GPPは、移動体通信 (5G/4G/LTEなど) の技術仕様を検討し作成するためのプロジェクトです。
3GPPにおいて作成された技術仕様は、3GPPの各OP (= SDO) によって国または地域の標準 (standard) として発行されます。
アウトプット
3GPPにおいて検討され作成される技術仕様は、3GPP TS (Technical Specification)という文書にまとめられます。3GPP TSはseriesごとに分類されています。
組織構成
3GPPは、PCG (Project Coordination Group)と複数のTSG (Technical Specification Group)で構成されています。とりわけ、TSGは、3GPPの技術仕様を検討し作成するグループであり、その配下に複数のWG (Working Group)をもちます。
プロセス
3GPPにおける技術仕様の検討・作成は、Releaseと呼ばれる機能のパッケージの単位で進められていきます。各Releaseは、Stage 1、Stage 2およびStage 3という3つのStageで進められます。